以前「規制の話ばかりしていないでドローンの有効活用を考えようよ」という記事を書いてみたものの、世の中の流れは「ドローンは危険!規制すべし!」という風潮になっています。そして2015年6月2日、遂に国土交通省からも航空法の改正という形で、ドローン規制骨子が発表されてしまいました。
政府は2日、首相官邸で小型無人機(ドローン)が落下した事件を受け、ドローン規制の骨子をまとめた。夜間の飛行、繁華街や住宅密集地、空港周辺での飛行を原則として禁止する。今国会に航空法改正案を提出し、早期の成立を目指す。ドローンが事実上、法規制の対象外だったため安全な運航に向けたルールを整備する。
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目次
ドローンはそれほど危険なものなのか?
ドローン規制を訴える人達の意見は、落下した際に怪我する恐れがある、盗撮に使われる恐れがある、テロに使われる恐れがある、といったものが多いです。いずれも間違ってはいませんし、実際に事故も起きているので否定はできません。単なるおもちゃとして扱うにはリスクの高いものであるというのは理解できます。
政府のドローン規制骨子
そんな危険なドローンに対して、政府が作成した規制の骨子を抜粋すると、
- 夜間、繁華街、住宅密集地、空港周辺での飛行禁止
- 免許制や検定制度の導入
- 利用者登録義務
- 飛行禁止区域内で飛行できない処置を行ってから販売する
などなど。これまで議論されていた内容が一通り盛り込まれている感じでした。
経済産業省はドローンに積極的
一方でこのように規制を進める政府とは反対に、経済産業省はドローンにビジネスチャンスを見出しており、幕張メッセでドローン国際展示会を開催するなどドローンの技術に期待を寄せています。
規制強化の流れがある一方で、ドローンの技術に期待を寄せている経産省は、それとは逆の動きをみせている。地域を活性化する「地方創生特区」で、秋田県仙北市の国有林がドローンの実証実験場として選定。また、5月には幕張メッセでドローンの国際展示会も行われ、訪れた内閣府の小泉進次郎政務官が「リスクばかりが報じられているが、どうやってよりよい社会作りに生かすかという視点を忘れてはいけない」と述べるなど、経産省を援護する発言も出始めた。
ドローン規制の何が良くないのか?
で、ドローン規制の何が良くないかというと、危険だから規制する、という発想とそこに至るプロセスがいけません。
危険だから規制する、ではあまりに短絡的な思考のように思えます。まだ技術的にも未熟な状態であるドローンなので、少なくとも、
- ドローンの良い所、今後伸びていくであろう分野
- ドローンの危険な所、悪用された際のリスク
- 規制することで損なわれるもの
- 規制することで守られるもの
を明確にした上で、規制内容を議論すべきだと思います。ですが、何のために規制するかをすっ飛ばして、まず規制の内容から議論がスタートしちゃってるように見える所に問題があるように感じます。さらに今回は国土交通省が規制を作成しましたが、経済産業省とは事前のすり合わせをしていたとは思えない内容になっており、適切なメンバーで議論するという大事なプロセスも抜けている所に危うさを感じています。
また、一度決まったものはなかなか変えないという、悪しき風潮がある日本において、このような規制が先にできてしまうことは、今後世の中の流れが変わってもいつまでたっても古い時代に定めた規制に縛られることに繋がりかねません。
規制を作ってそれで終わりではなく、運用していくなかで実態に合っていない場合や、世の中の時代の変化に応じて柔軟に規制を変えられるような仕組みを導入しないと形ばかりで自国の競争力を削ぐだけの規制になってしまいます。
政府の中ではこれらのことは全て検討した上での規制骨子だ、というのであれば検討内容の経緯も発表すべきですよね。
規制の流れは避けられそうにないのですが、規制決定までのプロセスを明らかにし、関係者との意見すり合わせをしっかりと行った上で決めてもらいたいものです。