ITストラテジスト試験に一発合格した勉強法を紹介します

このブログで試験勉強に対する考えを偉そうに語っておきながら、春の情報処理試験でシステム監査に落ちてしまい、ひどく落ち込んでいました。しばらく時間を置くうちに悔しさとまた挑戦するぞ、という熱い思いが湧き上がってきたので懲りずに秋の情報処理試験ではITストラテジストに初挑戦してみることにしました。

幸いなことに先日の合格発表で無事に合格できたので、自分への振り返りも兼ねて一発でITストラテジスト試験に合格できた勉強法をご紹介します。

なお、私は高度情報処理試験のうちプロジェクトマネージャ、情報セキュリティスペシャリストに合格しており、中小企業診断士でもあるのでそれなりに試験慣れしています。なのでここで書いた勉強法が読んだ皆さん全てに役立つとは思いませんが、参考になる部分がありましたら活用して頂ければと思います。

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目次

0.ITストラテジスト試験とは

ITストラテジスト試験の勉強法をご紹介する前に、そもそもどういった人が対象の試験なのか、どういう資格なのかを改めて振り返ってみましょう。いつものようにWikipediaさんから引用させていただきました。

超上流工程において、企業のトップマネジメントと共に、事業戦略・事業計画からシステム化計画の立案と実行を主導する戦略家(ストラテジスト)としての能力を認定する。高度な経営戦略知識・IT戦略知識・コンサルティング能力を持ち、経営者の立場で、企業の経営方針を左右する意志決定能力を証明することから、経営企画や最高情報責任者(CIO)などの幹部候補、ITコンサルといった立場の者を想定した国家資格である。

当試験は、旧情報処理技術者試験のシステムアナリスト試験と上級システムアドミニストレータ試験(共にスキルレベル5)を前身とし、情報処理推進機構の作成したロードマップにおける最終到達点という位置付けにあたる。また、IT系の資格では唯一、弁護士、公認会計士、医師、技術士等と並び、厚生労働大臣によって「専門的知識等を有する労働者」に指定されており、労働基準法において特例扱いの対象となる。

形式的には他の高度情報処理技術者試験と同じスキルレベル4であるが、これら歴史的な経緯や求められる水準・役割から、高度情報処理技術者試験の中でも最高峰の試験と捉えられることが多い。合格者の平均年齢は約40歳と高く、業界内でも経験を積んだ者が集大成として受験する試験と位置付けられている。

といった感じで、企業の情報システム部門長やITコンサルといった立場の人が対象で、難易度も高いものであることがわかります。

1.試験計画を立てる

6月にシステム監査試験に落ちて、まだ心の整理がつかない内に秋の情報処理試験の募集が始まりました。気持ちの整理がついたのが7月の下旬。心を新たにシステム監査と同様、どうしても合格したいと思っていたITストラテジスト試験に申し込みをしました。

申し込みをすると同時に試験計画を立てました。試験勉強ではやみくもに問題を解いても合格できません。しっかりと計画を立てて臨む必要があります。ましてや春のシステム監査の失敗を繰り返してはいけません。

最初に僕が立てた計画は次のようなものでした。

  • 8月の下旬までにITストラテジストのテキストを一冊やりおえる。
  • 8月の下旬から9月中は午後1試験対策、午後2論文対策をしっかりとやる
  • 10月に入ったら本番試験を想定した演習を多くやる

というものでした。

2.テキストを揃える

システム監査では試験対策に重きを置きすぎて肝心の知識不足が否めなかったので、今回はインプットに時間をかけ、しっかりと理解して頭に知識を定着することを意識して取り組むようにしました。

インプットにあたっては、今回はITECのテキストを用いました。

セキュリティスペシャリストではTACのテキスト、プロジェクトマネージャーとシステム監査は翔泳社のテキストを使いましたが、今回はITECです。翔泳社のテキストと見比べて見やすそうだし、なんとなく自分に合ってそうだと思ったのと、前回失敗したので今回は違うテキストにしたいという思いもありました。

このテキストの良いところはインプットとアウトプットを一冊の中でできることです。第2部が午前2試験対策、第3部が午後1対策、第4部が午後2対策となっています。

またシステム監査では論文で落とされたので、今回は論文対策用にもう一冊テキストを用意しました。

こちらはTAC出版のITストラテジスト 最速の論文対策というものです。

論文試験はついつい自分の思い込みで書き進めてしまう恐れがあるので、なるべく多面的な視点で見れるよう、書き方について具体的に指導してくれる本を探していたのでこの本はまさにピッタリでした。

2.午前試験対策

午前1試験対策は免除だったので詳細は割愛しますが、午前1試験は基本的に過去問からの出題の比率が高いので、市販の問題集や過去問を用いて数多くの問題に触れることが大切です。最悪、解き方がわからない計算問題などは答えを覚えてしまってもいいと思っています。数字が全く変わらず出題されることも多々あるからです。

午前2試験は最初に過去問を2年分を解いてみたら中小企業診断士試験の企業経営理論と重なる部分が多くあり、何も勉強せずとも6割は取れることがわかりました。

そこでITECのテキストの第2部の解説部分をじっくり読み込んだ後は、過去問6年分ぐらいを繰り返し解いて、しっかりと頭に知識を定着させるようにしました。

午前2対策は机に向かってじっくり解くというよりは、スマホアプリを使ってスキマ時間を活用するような取り組みで十分でした。

ITストラテジスト試験(ST)午前Ⅱ 過去問題集

3.午後1試験対策

午後1試験はITECのテキストの第3部で取り上げられている過去問を解いては解説と見比べるという勉強に徹しました。

最初は出題の意図を読み間違えたり、的外れな回答をしてしまって多く失点することも多かったのですが、第3部を終える頃にはだいぶ解き方を掴んでいることに気付きました。

まず問題を解いた後、解説と見比べて、明らかに間違った回答をしているものがあったら、なぜ間違ったかをじっくりと考えるようにしました。

僕の場合は、

  • 出題意図を読み間違えて、問題文の全然違うところ使った回答をしてしまう
  • 問題文の読み落とし

の2点が特に多いことに気付きました。そこで問題文を読んだ後、各設問との対応付を行うことにしました。具体的にどうするかというと、次の写真をご覧ください。


この写真は実際に試験当日に問題文に書き込んだものですが、”連携システムに参加する医療機関、訪問〜”の部分に下線を引いて、「これは設問3(1)に対応する部分だな」、とわかるようにしました。

これで全部の設問に線を引いていくと、次のようなことがわかるようになります。

  • 問題文のなかでわざとらしい表現なのに回答に使われていない部分がないか?
  • 同じ場所に複数設問の線が引かれていないか?

問題文の中に、しかし〜、〜できていない、とわざとらしく具体的に書かれている部分は出題者が回答の際に使えるように与えてくれたヒントになります。この部分を回答に使えばいいのは頭の中ではわかっているものの、いざ解いてみるとどこにも使っていなかったというミスをしがちです。線を引いて可視化することで、このようなミスを減らすことができます。

これまでの経験上、問題文の一つの記述が複数の設問で問われることはありませんので、同じ場所に複数線が引かれていた場合、間違えていることがわかるようになります。

この対策をすることで大きく出題意図を外すことがなくなりました。午後1試験対策はテキストを終えた後、直近3年分の過去問を週に2〜3問解くことを試験前の一ヶ月は継続して行いました。

4.午後2試験対策

システム監査が論文で落ちたこともあり、一番苦手意識を持っていたのがこの論文です。なにせ書くのも大変だし、自己修正が難しいからです。

当初はITECのテキストの第4部の午後2試験対策を活用しようと思ったのですが、模範の解答例を見ると「こんな論文どうやって書くんだよ!」と思ってしまい、もっと基本的な書き方から学ぶ必要があると感じました。

そこで色々と論文対策のテキストを探して、先にご紹介した論文テキストに辿り着きました。結果として、このテキストに書かれている手法は一部しか活用しませんでしたが、ITストラテジスト試験に求められる論文とはこうあるべき、という理想形を知ることができたのが最高でした。

論文を書くにあたっては、まず論文設計を行います。もっと簡単にいうと問題に対応した章立てと見出しを考えることです。この章立てと見出しがしっかりと作られていると格段に読みやすくなるうえ、詳細が書きやすくなります。

先のテキストでは更にモジュール単位で準備するとありましたが、僕はモジュール単位まで準備する必要性は感じなかったのでこの部分は使いませんでした。

その代わりといっては何ですが、論文に書きやすいシステム構築を一つ決め、それに関する導入事例を読み込み、テンプレートを用意しました。

僕は仕事で取り扱ったことがある営業支援システム(SFA)について論文を書くことを決めていたので、SFAに関する導入事例を沢山読みました。SalesForceやeセールスマネージャなどの導入事例は、企業ごとに様々な課題があって、その解決策をどのように考えたか、SFAを導入し、何が改善されたかなどが整理されていました。ITストラテジスト試験にはとても参考になる情報が満載だったので、それぞれの事例の要点を表に整理しました。これでどんな問題が問われてもこのテンプレートに当てはめていけば論文の骨子は掴めると考えました。

このテンプレートを印刷し、スキマ時間に見て頭に叩き込んでいきました。

論文設計を行うこと、事前に用意したテンプレートを活用するの2点を意識して過去問に取り組みました。論文はエネルギーを要するのそれほど多くは解けませんでしたが、直近の1ヶ月は週一本ペースで論文を書く演習を続けました。

論文を書く際は文字数も重要なポイントなので原稿用紙を購入し、文字数を意識しながら演習を行いました。

結果として書いた論文の本数は5問。論文設計は10問でした。少ないように思われますが、最初の論文設計でかなり苦戦して時間がかかったからです。
しかし、しっかりと論文設計の演習をしたお陰で、論文を書くようなってから文字数不足に陥ったり、書くことがなくなって尻目滅裂になるような状況は全くなくなりました。

5.結果

このようにやるべきことはやり切ったと思える状況で試験当日を迎えました。何度も試験を受けて試験慣れてしているとはいえ、やっぱり本番は緊張します。

午前2や比較的優しかったものの、午後1、午後2試験ともに難しくやっぱり難関資格と言われるだけあって、一筋縄ではいかないな、と実感しました。試験直後の感覚としては午後2の論文が出来た感じがせず、とても落ち込みました。

情報処理試験の大先輩にも再現論文をチェックしてもらったところ、ギリギリで合格か、という微妙なラインと言われ、不足している部分をいくつか指摘を受けました。

そんなこともあって、合格は難しいだろうな、という感じでなかばあきらめかけていたのですが、合格発表を見たらまさかの合格。

システム監査で落ちた後だっただけに嬉しさもひとしお。40歳過ぎた中年のおっさんが嬉しくてテンション上がりまくりで、興奮してなかなか寝付けませんでした。辛いことのあとにはいいこともある、これだから試験はやめられないって思いました。

結果はこんな感じでした。

ITストラテジスト試験 結果

ITストラテジスト試験 結果

午前2はできれば100点取りたかったですが、96点も取れれば十分すぎるぐらいです。

午後1が少し危なかった感じですが、第一問が難しかったのでこんなものかなという感じ。80点以上の受験者が少なく、ボーダーの60点前後に大半の人が集中しているところからも今回の午後1は難易度が高かったみたいです。

午後2の論文は何とかA評価。今回もA評価の人数が一番多いことからもわかるとおり、午後2まで辿り着いて大きく失敗しなければ合格できるのでは、と感じました。

ITストラテジスト試験に合格したことで午前1試験免除期間も延期されたことだし、次は春のシステム監査にリベンジです。これまで合格した試験はいずれも実務経験があるので比較的取り組みやすかったのですが、システム監査だけは実務経験が無いので難易度も高いと思います。あきらめずにコツコツと取り組んでみます。