OneDriveの容量制限はMSの新たなクラウド戦略の兆候か?

11月4日、Microsoft(以下MS)はクラウドストレージサービスのOneDriveについて、無料で使える容量を15Gから5Gへ削減することを発表した。またカメラロール特典としてついてくる15Gの特典もなくなるとのこと。更には有料版のサービスでも容量制限をかけるなど、サービスレベルが著しく低下した。今回はこのサービスの概要をおさらいするとともに、MSがなぜこのような方針に舵を切ったのか考察してみることにした。

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目次

OneDriveのサービス変更内容

変更内容についてはまずは公式ブログの記述を転用させて頂く。

  • Office 365 Solo、Office Premium 製品をご利用いただいている一部のお客様への無制限ストレージの提供を終了します。これらの製品には 通常1 TB の OneDrive ストレージが付属しています。
  • 新規のお客様には 100 GB および 200 GB の有料プランをお選びいただくことができなくなります。これに代わり、2016 年早々に月 1.99 ドル(日本での販売価格は未定)の 50 GB プランの提供が開始されます。
  • 無料の OneDrive ストレージ容量を 15 GB から 5 GB に変更します。現行および新規のすべてのユーザーの皆様が対象です。また、15 GB のカメラ ロール ストレージの特典も終了します。これらの変更は、2016 年の早い段階から順次適用されます。

大雑把にまとめると、1)これまで有料サービス利用者は容量無制限だったストレージが1TBに制限される。2)無料サービス利用者は最大30Gまで使えたストレージが5Gまでに制限される。3)100G,200Gの有料プランを新規に利用できなくなる。

当然いきなり容量が制限されるわけではなく、移行措置が用意されており、制限がかかり始めてから12ヶ月間はファイルにアクセスできるので、その間にファイルをどこかに移しておいて下さいね、ということらしい。

OneDriveのサービス変更の理由

このようなサービスの改悪を行った理由としてMSは公式ブログで以下のように述べている。

Office 365 サブスクリプションをご利用いただいている、一部の個人ユーザーの方に、無制限のクラウド ストレージをご提供してまいりましたが、一部のお客様は多数の PC をバックアップしたり、手持ちのすべての映画や DVR の録画を保存したりするためにクラウド ストレージを使用しており、その容量はユーザーあたり 75 TB を超える場合もあります。これは、平均的なユーザーの 14,000 倍に相当します。マイクロソフトは、このような極端なバックアップ シナリオではなく、大多数の OneDrive ユーザーに役立つ高価値の生産性機能や同作業支援機能を提供することに引き続き注力していきたいと考えています。

つまり、一部のユーザーが大量に使ったからサービスに利用制限を設ける、ということらしい。容量無制限を謳っている以上、このような使い方も当然される可能性があるわけで、サービスの設計自体がずさんだったのではないかと疑われても仕方ない。

また、一部のユーザーが大量に使ったから容量制限を設ける、というところまでは論理的には理解できなくもないが、もともと制限がかかっていた無料ユーザーの容量までもが削減されることについては、納得できる理由が提示されていない。

OneDrive

MSはなぜこのような改悪を行ったのか?仮説を立ててみた。

このようなサービスレベルを下げるような行為は、顧客の満足度を下げ、不信感を招くだけだが、それでもなぜMSがこのような決断をしたかについて、以下3つの仮説を考えてみた。

仮設1 OneDriveのクラウドストレージの容量が全世界的に逼迫している

MSがOneDriveに割り当てているクラウドストレージ容量が全世界的に逼迫しており、ストレージの増強スピードが利用量増加のスピードに追いつかず、このまま利用していればすぐに容量不足に陥ると判明した。サービス全利用者に影響が及ぶぐらいなら、今のうちに容量制限しちゃったほうがまだマシだと判断した。

仮設2 OneDriveをより安く提供し、有料サービス利用者を増やしたい

無料ユーザーはどんなに使ってもらってもなかなか有料サービスを使ってくれない。ならば無料で使える容量を制限しつつ、そんなに負担にならない程度の安い料金で利用してもらい、有料サービス利用者を増やしたい。決済の仕組みさえ掴んでしまえば、そこからついで購入やサブスクリプションの支払いなどなんでも出来てしまうので利用者の囲い込みも容易になる。

実際に今回はこれまで有料サービスでもっとも安かった100Gプランの新規契約を中止し、50Gプランを提供するとのことなので、あながちこの仮説も間違っていないと思われる。

仮設3 全く別のストレージサービスを開発中

全く新たなコンセプトのクラウドストレージサービスを開発中で、今後はそのサービスに注力するため、OneDriveはサービスを収束させていく予定。

OneDriveはOfficeOnlineが使えることが他のストレージサービスに比べると大きな特徴と言えるが、ローカルストレージと同期をとる機能があり、フルクラウドではない。昨今のMSのクラウド戦略を考えるとストレージもローカルにファイルを持たずにすべてクラウドにする形態に変更したいと考えているのではないだろうか。そこでOneDriveのサービスは収束していき、今後登場する新たなフルクラウドのストレージサービスをメインサービスにしようとしていることも十分に考えられる。

以上、好き勝手に仮説を立ててみた。現実的なところでは仮設2の可能性が高いと思うが、わざわざサービスを改悪してまでやることか?という疑問は残る。

今後の動向に注目

サティア・ナデラがCEOになってからMSはクラウドサービスに大きく舵を切り、それがうまく行ってきたと素直に思う。見事に方向転換を実施したな、と感じていたので、なおさら自ら舵を切ったクラウドサービスで、今回のようなサービスレベルの低下を選択したのかが、理解できず今回色々と可能性を考えてみたわけだ。

矢継ぎ早に新たな展開を見せる新生MSなだけに、今回のサービス内容の変更は今後のMSの進むべき方向の新たな兆候に思えてならない。今後も動向に注目していきたい。