アニバーサリーアップデート前に確認しておきたいWaaS対応の考え方

8月2日よりWindows10一周年を記念したアニバーサリーアップデートと呼ばれる大規模なアップデートが提供されます。様々な機能が盛り込まれる予定で大きな注目を集めています。主な新機能はこのサイトに詳しく紹介されています。

目次

関連サイト

「Windows 10」、8月2日の大型アップデートでどう変わる?–主な新機能を紹介 – ZDNet Japan

Windows10を企業に導入するにあたり、一番やっかいだと考えているのが今回のような大規模アップデートです。

このような大規模なアップデートを含むWindowsのサービス化をWaaS(Windows as a Service)と呼んでいますが、今回のアニバーサリーアップデートを前に今一度、このWaaSの考え方を押さえ、企業における対応の考え方を整理したいと思います

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Windows 10には2種類のアップデートがある

以前、Windows10の企業導入における記事を書きましたが、

関連記事

Windows10、企業導入の最大の障壁はWaaSへの対応だ(1/2) | tomokimatsubara.net
こちらにWaaSの概要を記載していますのでこちらも合わせて読んで頂ければと思いますが、Windows10のアップデートには2種類あります。

Win10updateshurui

Windows10以前のWindows Updateに相当するのがServicing Updatesで、昨年11月、そして今年8月のアニバーサリーアップデートで行われるような大規模な機能追加が行われるのがFeature Upgradesになります。

Feature Upgradesが抱える問題

企業でのWindows10導入においてやっかいなのが、このFeature Upgradesです。

Windows10では最新バージョンのWindows10しかサポートされないという問題があります。つまり8月にアニバーサリーアップデートされると、昨年11月のバージョンのWindows10はサポート対象外となると言われています。企業向けのCBBと呼ばれるモデルに限り最新2世代までサポートされますが、8月以降は昨年7月にリリースされた初代Windows10はサポート対象外となります。

さらには企業内で使われている各種システムの動作検証を都度行わなくてはならないという問題が発生します。

そしてもう一つ、大きな問題がFeature Upgradesの配信とアップデートの問題です。Feature Upgraedesはデータ容量が非常に大きいです。昨年11月のアップデートで約3G。今回のアニバーサリーアップグレードも大規模な機能追加が行われているので同程度のデータ容量になると噂されています。

この大容量の更新プログラムを配信することで企業内ネットワークに大きな負荷がかかる問題や、アップデート中にPCが利用できない時間が発生する、などの問題があります。

そこで今日はFeature Upgradesのアップデートのタイミングに対する考え方と、Feature Upgradesの配信方法に対する考え方の2点について説明します。

1.Feature Upgradesのアップデートのタイミングに対する考え方

ここでは一般的な企業の多くが採用されると思われるCBBを想定してお話をします。CBBとは一般的なFeature Upgradesが配信された後、約4カ月後にリリースされる企業向け安定バージョンのWindows10のことで、CBBのWindows10に限り最新2世代がサポートされます。

CBBのWindows10を採用する企業にとって、Windows10のFeature Upgradesの方法は3種類あります。常に最新のWindows10を利用するもの、常に最新の一世代前のWindows10を利用するもの、2世代ごとにWindows10をアップグレードして利用するものです。

常に最新のWindows10を利用する

 

Windows10featureupdate03

これは常に最新のWindows10を利用するというもので、最新機能を常に使え、セキュリティも最新であるということが最大のメリットです。デメリットは常にアップグレードしなくてはならないことと、企業内システムの動作検証時間が短いことなどです。

常に最新の一世代前のWindows10を利用する

 

Windows10featureupdate01

このメリットは企業内の社内システムの動作検証時間を比較的長く取れるところです。一方デメリットは常にアップグレードしなくてはならなところです。

2世代ごとにWindows10をアップグレードして利用する

 

Windows10featureupdate02

こちらは2世代ごとに1度のアップグレードになるので、1つのバージョンを長く使えることとアップグレードの頻度を抑えられることがメリットになります。一方デメリットは最新のモデルが発表されてからCBBが発表されるまでの約4カ月で企業内システムの動作検証、改修を行わなくてはならないので準備が大変だということです。

このようにそれぞれ一長一短があるので、自社の状況に応じてベストな方法を選択することがポイントになります。

2.Feature Upgradesの配信方法に対する考え方

Feature Upgradesを企業内PCに配信する方法としては大きく4種類が挙げられます。

Windows10updatemethod

Windows Update

Windows Updateは各パソコンが個別に直接インターネットからダウンロードして適用するものですが、企業内で利用するにはアップグレードを制御できないことが懸念事項です。これによりネットワークの負荷が一気に高まるリスクやアップグレードの適用漏れが生じるなどのリスクがあります。

WUB(Windows Update for Business)

次がWUB(Windows Update for Business)ですが、これはCBBを採用したWindows10で使える仕組みとなりますが、大きな機能としてはアップグレードの配信曜日や時間を細かく指定できるものです。これによりPCごとに配信時期をずらすことが出来るようになります。またこのWUBはActiveDirectoryで制御することができます。

WSUSやSCCMなどの更新プログラムの配信システムは持っていないが、ActiveDirectoryで企業内のPCは管理出来ているという企業にとってはActiveDirectoryでWUB使って配信時期を制御できるようになるのが魅力です。

複数の場所から更新

次にWindows10から採用された更新プログラムの適用方法である「複数の場所から更新」というものです。これはP2Pの技術を使って、企業内で最初にアップデートした1台のPCから近くにあるPCに更新プログラムを配信するというものです。この方法の魅力は同一ネットワーク内では最初の1台以外は、外部ネットワークに接続することなくアップデートすることができるので、ボトルネックとなりやすい外部との通信を最小限に抑えることが出来ることです。

WSUS、SCCM

そして最後にWSUSやSCCMといった更新プログラムの配布システムを利用する方法です。PCの台数が数百台ともなる大企業ではすでに導入されている企業も多いかと思います。

これらの更新方法の中で気を付けたいのが、最初の3つWindows Update、WUB、複数の場所から更新は、WSUS、SCCMとの併用が出来ないということです。

例えばネットワークの負荷を抑えようと特定のPCにだけWSUSから更新プログラムを配信し、そのPCを伝って、同一ネットワーク内のPCは複数の場所から更新を使って配信するというような使い方は運用がとても難しくなります。※できなくは無いですが、PC台数が多い中での運用は現実的ではありません。

またWSUS、SCCMを使って更新プログラムを配信する場合でも、配信タイミングを細かく分けないで配信している場合は、Feature Upgradesのような数ギガのデータを一度に配信してしまいますので、帯域制限を設けるなどの注意が必要となります。

このようにFeature Upgradesの配信には企業の規模やパソコンの台数、ネットワーク環境などを総合的に判断して最適な方法を選ぶことがポイントとなります。

最後に

今回はFeature Upgradesにフォーカスして注意点を整理してみましたが、Windows10はこれまでのWindowsとは違った観点での管理を要求されるようになっています。

アニバーサリーアップグレードではセキュリティ機能なども強化されているとのことなので、企業にとっても是非とも導入したいところですが、これまで述べたようにその道のりはなかなかハードなものです。

MicrosoftはWindows10の普及を推進していいますが、企業で導入するには運用負荷は高まっていますので、運用負荷を改善する新機能ももっと導入してもらいたいところです。