先日MicrosoftがTeamsというチャットをベースとした業務用コラボレーションツールを発表しました。これは既に多くの企業で利用されているOffice365の中の一つの製品という位置づけのようです。

チャットベースの業務用コラボレーションツールとしてはSlackが有名です。特にIT関連のベンチャーではかなり利用されています。

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こちらでも10人中4名がSlackを挙げており、うち3名が1位としており、その評価の高さが伺えます。

2009年に創業したばかりのベンチャーであるSlackに完全に対抗した製品ともいえるTeamsは果たしてどんな製品なのでしょうか。そして、なぜこのタイミングでMicrosoftはTemasを発表したのでしょうか。今回はこの辺りについて書いてみます。

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Teamsとは

TechCrunch Japanの記事をベースに紹介します。

Microsoft、Teamsを発表―Slackの強力なライバルはスレッド化できる企業向けチャット・ツール | TechCrunch JapanMicrosoft、Teamsを発表―Slackの強力なライバルはスレッド化できる企業向けチャット・ツール | TechCrunch Japan

 

Teamsを一言で言うと、

チャットをベースにしたワークスペースでありリアルタイムの共同作業を助けつつ、知識を共有するチームが組織されるようデザインされたツール

とのこと。単なるチャットツールではなく共同作業を促進するためのツールとなっているところがポイントです。会議、記録、計画、チャットといった組織内の様々な活動をTeams上で出来るようになっています。

さらにいくつかの特徴があります。

  • Skype、Word、Excel、PowerPoint、OneNoteといったMicrosoftの他の製品との連携ができる。
  • Office365のグループベースで利用できる
  • 高度なカスタマイズ(絵文字、スタンプ、GIFなど)が可能
  • Microsoft Botとの連携も可能
  • iOS,Android,Windows 10 mobieと全てのモバイルOSにアプリを提供

などなど。

イメージはこちらの動画をご覧下さい(英語です)。

なぜTeamsを作ったのか?

単にチャットという意味ではOffice365にはSkype for businessがありますし、スレッド形式で情報共有するのであればYammerという社内SNSが用意されています。ともするとツールの使い分けで混乱が生じかねない状況の中で、さらにTeamsという新しいコラボレーションツールを導入したのはなぜでしょうか。

単にSlackの人気に便乗したというのではなく、Microsoftの競争戦略の表れと考えるとわかりやすいと思います。簡単に言うとMicrosoftはIT業界におけるリーダー戦略を取っています。リーダー戦略とは競争地位戦略の用語の一つです。

リーダ戦略とは

競争地位戦略とはかの有名なフィリップコトラー氏が提唱した経営戦略理論の一つで、マーケットの規模とシェアに応じた戦略を取るというものです。

(1) マーケット・リーダー

最大のマーケットシェアを持ち、業界を牽引する主導的立場にある企業です。自社のシェアを維持、増大させるだけでなく、市場全体を拡大させることが戦略目標となります。

(2)マーケット・チャレンジャー

業界で2、3番手に位置づく大企業で、リーダーに挑戦しトップを狙う企業です。市場戦略による利益への影響を分析するPIMS研究によると、一般にシェアが高まると収益性が高まることがわかっています。そのため、攻撃対象を明確にし、競合他社の弱点をつくなどしてシェアを高めることを戦略目標とします。

(3)マーケット・フォロワー

業界で2、3番手に位置づく大企業ですが、業界トップになることを狙わずに競合他社の戦略を模倣する企業です。製品開発コストを抑え、高収益の達成を戦略目標とします。

(4)マーケット・ニッチャー

シェアは高くありませんが、すきま市場(ニッチ市場)で独自の地位を獲得しようとする企業です。扱い商品の価格帯や販売チャネルなどを限定し、専門化することで収益を高めることを戦略目標とします。

出典:NRI コトラーの競争地位戦略

Microsoftはこの競争地位戦略でいうリーダー戦略を実践しています。すべての分野をカバーすべく、様々な分野で強力な製品を投入しています。

例えばがっぷり4つに組んだ競合の一つGoogleに対しては検索エンジンでBingを用意し、音声認識ではCortanaなど。さらに長年のライバルAppleに対してはSurfaceシリーズでハードウェア面でも競争をしかけています。

SaaSの大手、Salesforceに対してはDynamic CRMを用意しているし、PaaSの代表格であるAWSに対してはAzureを用意しています。

このようにMicrosoftは全方位で市場のシェアを獲得しようとするリーダー戦略を実践しています。今回のSlackに対抗してTeamsをリリースしたのも、リーダー戦略によるものと考えられます。

msslacklogo

さらに、Slackに対抗してTeamsを発表したのには2つの理由があると考えられます。

1.チームでのコラボレーションツールの重要性をMicrosoftも認識し、急速にユーザー数を増やしているSlackに対して脅威を感じたから

SlackはDAU(デイリーアクティブユーザー;1日にそのサービスを利用する人数)が400万人を超えています。アメリカでの競合ともいえるHipChatはユーザー数を公表していませんので正確なところはわかりませんが、Slackは既にHipChatを超えたとも言われています。

Google Trendで調べてもSlackの方がはるかに注目度が高いことがわかります。検索数だけで見るとOffice365よりも検索されていることがわかります。

Slackは2009年に創業してから非常に短い期間で急速に成長しています。Office365のユーザー数からすると取るに足らない数字とも思えますが、このように急速に成長している企業に危機感を募らせている可能性はあります。

かつてスマートフォン市場が急速に伸びた時に後手を踏み、遅れを未だに取り戻せていない状況の二の舞を防ぎたいと思いが強いのではないでしょうか。

2.Microsoftの既存製品との連携でMicrosoftの強みが活かせると考えたから

Microsoftがリーダーたるゆえんの一つとして、全方位で様々な製品・サービスを提供しているだけでなく、各製品・サービスが個々に独立しているのではなく、それぞれが連携しているところです。

チームでのコラボレーションにおいても既存のMicrosoft製品との組み合わせが出来れば、Microsoft自身の強みを強化できると考えたのでしょう。実際にTeamsもMicrosoftの様々なサービスと連携しています。これにより使い慣れたサービスと連携することでより生産性を向上することが出来そうです。

まとめ

今回はTeamsの発表に合わせてMicrosoftのリーダー戦略と絡めてお話をしました。Microsoftは企業向けの製品・サービスに圧倒的な強みがあり、今回発表されたTeamsも企業ユーザーに浸透することが考えられます。

とはいえ、Microsoftが強みとするのは大手企業が多いのも事実で、Slackとは若干ターゲットとするユーザー層が違うように感じます。Slackの今後の動向が気になりますが、意外と競合せずに共存するのではないかと感じています。

SlackもこんなWelcomeな投稿をTwitterにしていますし、どうなることやら。