マーケットインはもう古い!ダイソンに見る顧客志向型プロダクトアウト

機能もデザインも洗練されたダイソンの家電製品。市場のニーズを細やかに汲み取って作られたものかと思いきや、なんとマーケティングはしないそうです。この極端とも言える製品開発のアプローチについてインタビュー記事等から考察してみました。

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ダイソンは英国のメーカーですが今春、表参道に旗艦店をオープンしたりと日本の市場を強く意識しています。しかし、そこには消費者のニーズを探るマーケティングという意識はありませんでした。

目次

ダイソンはマーケティングをしない

ダイソン日本法人の麻野社長のインタビュー記事を読むと、

  • 消費者を驚かす製品を開発できる理由は「マーケティング」をしないこと
  • 消費者のニーズだけを探っていても驚くべきものはできない
  • 徹底的なプロダクト重視

などなど刺激的な言葉が出てきます。ここで思いついたのが従来からあるプロダクトアウト、マーケットインというマーケティング用語。

プロダクトアウト

大量生産時代の悪しき風習の様に語られることが多いこの言葉、良い物を作れば売れるという考えのもと、作り手の理論を優先したモノづくりを言うことが多いです。

マーケットイン

一方マーケットインは消費者のニーズを優先し、顧客視点を取り入れた商品の企画開発を行うことを言います。とはいえ、かのスティーブ・ジョブズの名言「人は形にして見せてもらうまで、自分が何を欲しいのかわからないものだ。」からも解るように、見たこともない革新的な製品というのはマーケットイン思想では生まれにくいとも言われています。マーケットインだと既存製品の改良版を生み出すのが精一杯になるケースもあります。

顧客志向型プロダクトアウト

ダイソンは製品開発のプロセスとしてはモノづくりを重視した完全なプロダクトアウト型ですが、昔ながらのプロダクトアウトと違うのは、作り手の理論を優先するのではなく、使う人を優先したモノづくりをしているところです。

自分達の技術だけを考えた製品開発ではなく、その技術でお客様にどんな価値を提供できるかを考えた製品開発を行っています。

例えば有名なデュアルサイクロンテクノロジーという遠心力でゴミを分離させることが出来る技術ですが、それがお客様にどんな価値を与えることが出来るかということまでを考えた製品開発を行っているところがダイソンの凄いところです。ダイソンは技術力を謳うのではなく、「吸引力が最後まで衰えない」、というお客様にとって有益な価値をしっかりと考えた製品開発を行っているのです。

従来型のモノの作り手(プロダクトアウト)からモノの売り手へ(マーケットイン)とシフトし、そこから買い手を中心としたマーケティングにシフトしてきるというのがわかるダイソンの顧客志向型プロダクトアウトでした。